掲載日: 2022年2月16日
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どうして、能登半島などの山地でも段々の水田を作ってまでお米を作るのだろう。平地に作ればもっと楽に作れるのに・・・。
能登半島に行くと、山のてっぺんから海の方までの急斜面に、1枚1枚が小さくて形がふぞろいの田んぼが見えてきます。これでは、機械も入れませんね。今でも、昔からおこなわれていたように、田植えからイネかりまで、すべて人の力で米作りをしています。
たとえば、能登半島の先っぽにある輪島市の「千枚田」は、標高567mの山すそが海に向かって流れ込むような急斜面の1.2ヘクタールの土地に、2,092枚の田んぼが入っています。1枚平均6平方メートルというせまさ、です。
では、なぜこんな急斜面に田んぼを作ったのでしょうか?
答えはカンタン。平らな土地(平地)がなかったからです。そのために、昔の人が、なんとか急斜面を利用して米を作りたい!ということでみんなで知恵を出し合い、地形を利用した独特な形の田んぼを作り上げたのです。
千枚田ができた正確な時代は不明ですが、1630年ごろに1枚1枚の田んぼに水が引けるように整備されたという記録が残っています。
最近になって、能率が悪い、減反(げんたん=米を作る田を減らす)政策、農家の人が年をとってきた、というさまざまな理由で、手間がかかる千枚田は見放されようとしていました。
しかし、機械を使わず、全部人手でおこなう作業が今まで受けつがれた千枚田の米作りは、昔の人が知恵を出し、そして、そのアイデアを実行したという、すばらしい仕事のあらわれです。
千枚田という田んぼがあったことでそれに関係する文化が発展したこと、千枚田が防災やダムの役目を果たしていること、さらに、斜面に広がる様子があまりにもきれいで、観光の目玉としても貴重な存在となっていることから、保存する動きが活発になってきています。