掲載日: 2022年2月16日
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どうして、品種改良を進めていく必要があるのでしょうか?
日本では、北は北海道(ほっかいどう)から、南は沖縄(おきなわ)までお米が作られています。しかし、どこでも同じお米が作られているわけではありません。その土地その土地に合ったお米が作られています。寒いところでは、寒さに強いものが、病気が出やすいところでは、病気に強いものが作られています。しかし、寒さに対する強さや、病気に対する強さは、じゅうぶんではありません。そのため、お天気が悪くなったりすると、農家の人は、自分のところのお米はだいじょうぶか?と心配になります。
暑い地方にもそれなりに問題があり、よりよい品種を開発する工夫と努力が続けられています。
夏に寒くなるキケンがある東北地方では、実際に、平成5年には、あまりにも寒かったので、ほとんどお米がとれなかった地域もあったほどです。その年、私たちのように特に東北地方で、米の品種改良をしている人たちは、「今のイネの寒さに対する抵抗力(ていこう りょく)は、まだまだたりない・・・」とガックリときたのです。
また、今の有名な品種で、おいしくて、さらに病気(いもち病など)に強いと自信をもっていえる品種はほとんどありません。おいしいことはおいしいのですが、病気には決して強くはないのです。「コシヒカリ」「ササニシキ」「あきたこまち」「ひとめぼれ」「はえぬき」・・・・・みんなそうです。
ですから今のお米よりも、もっともっと寒さや病気に強いものをめざして新品種を創り出していかなくてはならないのです。それが、農家の人が安心してお米を作ることにつながり、農家のくらしを守ることになるのです。病気に強い米を創り出せば、まく農薬の回数と量が減り、農家は手間と金がかからなくなって喜びますし、消費者にもできるだけ農薬の少ない米を食べてもらえます。
また、「じかまき」といって、タネもみをちょくせつ田んぼにまいてイネを作る方法があります。国や各県で開発が進められていて、田んぼの条件が悪くても、寒くてもしっかり芽を出してのびてくること、秋にはたくさんの米をつけても、かんたんに倒れないこと、それでいておいしいことが「じかまき」むきの品種になります。「萌えみのり」「ほしまる」等の品種が創り出されています。
こんな品種があれば、手間をかけないで、もっと米を安く作れるので、作る方も買う方も喜んでくれます。
毎年毎年いろいろな天気がやってきます。夏なのに寒かったり、ものすごく暑かったり、病気がはやったりします。わたしたちのように、米の品種改良をしている人の願いは、どんな天気になっても、おいしい米が安定してたくさんとれるようにしたいのです。これは山形県だけでなく、あちこちの県の研究者の願いです。よりよい品種を創り出すことに決して終わりはありません。
どうでしょうか?わかってもらえたかな。今見たり聞いたりする有名な品種でも欠点があって、この品種でじゅうぶんだ、もうしなくてよい、ということはありません。つねに、今あるものより良いものをめざして、品種改良の仕事は、ずっと続いていくのです。