掲載日: 2022年2月16日
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なんで、お米を全部有名な「コシヒカリ」とかにしないの?
コシヒカリは、生産量第1位の新潟県がある北陸地方から、九州・四国地方まで、北海道・東京都・沖縄県をのぞく全国44都府県で作られています。昭和31年に登場してから、60年以上たちますが、今でもダントツにトップで、全国の田んぼの3分の1は、コシヒカリが作られています。
全部コシヒカリにすればいいのに、ということですが、全部の田んぼをコシヒカリにできないわけがあります。
コシヒカリは、「いもち病」という病気に弱いため、面積が増えすぎると、いもち病が発生したときに、一気に広がる危険があります。どの田んぼもコシヒカリだけとなっていると、あたり一面病気にやられ、収かくできる米の量が減ってしまいます。
実際に、1988年は、東北地方の太平洋側を中心に、きびしい冷害が起きた年でしたが、8月と9月に長雨が続いた、岩手県南部地帯から宮城県・福島県にかけてと北関東地方では、コシヒカリ・ササニシキなどにいもち病が大発生して大きな被害が出ました。
最近は、いもち病によくきく、さまざまな農薬が開発されたり、病気の発生をはやいうちから確認できるようになってきたために、いもち病の大発生はありませんが、病気への抵抗力(ていこう りょく)が弱いコシヒカリが、今でも多すぎるのに、これ以上増えると、悪い天気が続いた場合、いもち病が大発生する危険があります。
それから、コシヒカリは花がさいて米が実る時期がおそいため、2000年頃までは山形県や宮城県あたりが作れる北の限界とされています。そのために、山形県・宮城県より北の各道県では作ることができません
コシヒカリを作れないこれらの地方では、昔から、その県に一番よく合う品種の開発を続けていて、秋田県では「あきたこまち」などが、北海道では「きらら397」「ゆめぴりか」などがデビューしています。
作る品種がコシヒカリ1つしかないと、たとえば、米の実る時期ですが、全部の田んぼがいっせいに米が実ってイネかりしてもよい時期になります。イネかりがおくれると、米の品質や味が落ちますから、全部の田んぼから急いで収かくしなければなりません。
しかし、動ける農家の人数や機械の台数は決まっていますから、思ったとおりにはイネかりは進みません。また、米をかわかしてから出荷しますから、かわかす作業もイネかりの時期に集中してしまいます。
結局は、人や機械にムリがかかり、品質の良い米を出荷することができなくなります。
いもち病という病気が発生しにくいように、病気に強い品種の開発が進められ、各県で作られています。味がよく病気にも強いという品種が何種類か作られれば、病気を起こす菌(きん)が増えにくくなり、大発生をおさえることができます。
イネかりの時期が集中しないように、早生(わせ)・中生(なかて)・晩生(おくて)というように、その地方で早く実る品種からおそく実る品種まで、組み合わせて植えることで、収かく時期をずらすことができ、人にも機械にもムリがかかりません。