掲載日: 2022年2月16日
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社会の資料集を見ると、コシヒカリの作付面積がこの十年以上、圧倒的に一位を保っています。これはどうしてですか。コシヒカリが一番おいしくて作りやすいからですか。コシヒカリを超える品種はまだ生まれていないのですか。
コシヒカリの人気の秘密ですね。
コシヒカリは、生産量第1位の新潟県がある北陸地方から、九州・四国地方まで、北海道・東京都・沖縄県をのぞく全国44都府県で作られています。
昭和31年に登場してから、60年以上たちますが、今でもダントツにトップで、全国の田んぼの3分の1は、コシヒカリが作られています。
コシヒカリという品種は、お米がきれいで、味がとても良いことにくわえて、気温が高くても低くても、それなりにお米を実らせることができる品種です。花がさく時期が遅いため、北の地方ではムリですが、全国どこで作っても、しっかり育ち、きれいでおいしいお米がとれるのです。
それで、全国の農家の人が「これは、いい!」と目をつけ、どんどん広まっていきました。ただし、背たけが長くて「くき」が弱いので、倒れやすいことと、いもち病という病気に弱いことが欠点です。
背たけが伸びないように、肥料の量を減らしたりして作り方を工夫しています。また、いもち病もすずしくなると、かかってもあまり病気が進みません。お米が実る時期が遅いコシヒカリは、すずしい気候の中で実るため、いもち病に弱い点は、あまり問題にならないで、今まできました。以上が農家のほうからみたコシヒカリです。
また、消費者のほうからみてみると、同じ地方でとれたお米の中で、コシヒカリとほかの品種の味を比べたら、コシヒカリのほうがおいしいといわれています。さいきんは、ねばりのあるお米を好む消費者が増えてきて、コシヒカリを買って食べている人がとても多いのです。
もうひとつ。コシヒカリは、わりと高い値段で取引されるため、お米を売る仕事をしている人は、ほかの品種を売るよりも、コシヒカリでもうけることができる、というのも、コシヒカリが消えない理由の1つです。
今は、消費者の人気があるものが広い面積で作られる時代です。コシヒカリのような、「くき」が弱くて倒れやすいうえに、いもち病に弱い品種は、まだまだ、未完成の品種です。ただ、おいしいだけでは、品種の力としては、不じゅうぶんです。
私たちは、「はえぬき」や「つや姫」を開発しました。これらの品種は、味の良さはコシヒカリと同じかまさり、「くき」が短く、倒れにくい性質があります。また、いもち病に対しても、コシヒカリより強くなっています。特に「つや姫」はお米の白さがきわ立っていて、コシヒカリを超えています。
今、全国の県から続々と新品種が出てきています。これからは、味だけが良いという品種でなく、病気や害虫に強く、たくさんとれるお米の品種も出てきます。こうした性質を改良することも、農薬を減らしたり、米作りにかかるお金を少なくすることになるので大事なことなのです。
みなさん、品種改良をするときに、お米は「味」だけで選ぶのではなくて、いろいろな方向を向いて新しい品種を創り出そうとしている人がいることを忘れないでいてください。