掲載日: 2022年2月16日
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品種改良とは、どういうものですか、どんなやり方があるのですか?
品種改良とは、いろいろな性質のものの中から目的に合ったものを選び出すことです。品種改良の第1歩は、まず、いろいろな性質のものを創り出すことです。お米の品種改良のやり方は、次のように、いくつかの方法があります。
自然にできた「変わりダネ」から良いものを選んで新しい品種にする方法です。明治時代までは熱心な農家が、自分の田んぼで見つけた変わったイネを増やして植えていました。このようにして少しずつ改良されたイネが生まれていきました。
自然にできる「変わりダネ」はそんなに多くないし、目的に合ったものばかりではありません。選びたい性質をもっとたくさん、人の手で出すことができれば、良い品種がたくさん早く生まれる可能性が高くなります。人の手で変異を出す方法のうち一番使われている方法が「かけあわせ」です。
たとえば、寒さに弱いけれどもおいしい品種と、寒さには強いけれどもおいしくない品種があるとします。どちらの品種も実際に作るには、よくありません。おいしくて寒さに強い品種があればいいわけですが、それには、この2つの品種をかけあわせて、その子どもたちの中から、おいしくて寒さにも強い品種を選んでいけばいいわけです。
イネの場合、ふつうは自家受粉といって1つ1つの花が自分のめしべに自分のおしべの花粉をつけて実をつけます。けれども、イネが自分のおしべの花粉をつけてしまう前におしべをとってしまうか、または、お湯につけて花粉をダメにしてしまって、めしべだけを生かしておきます。そこに、別の品種の花粉をもってきて、つけてやるとその花粉でも実をつけます。そして実ったタネは、めしべの品種の性質と、花粉の品種の性質の両方をもらった、新しい性質を組み合わせたイネになります。このように、今のイネの品種のほとんどは、この交雑育種法で生まれた品種です。
品種になるには良い性質をもっていること、その良い性質が変わらないことが必要です。かけあわせをしてから2~3年はお父さん(おしべの品種)、お母さん(めしべの品種)からもらった性質がまだ落ち着かず、この世代に良いと思って選んでも、性質が変わってしまうことがあります。そこでかけあわせをしたタネは3回くりかえして植えて、性質を落ち着かせます。人間でも兄弟で、にてるけど少しちがうように、タネ1つ1つはちがう性質を持っているので、4回め(4世代め)に植えたものから良いものを選んでいきます。
イネに放射線をあてて「変わりダネ」を出す方法です。
まだ「いなほ」が出る前のイネの葯(=やく:おしべの花粉の入った袋のこと)を、試験管の中の栄養分の入った寒天で育てるバイオテクノロジーという技術の1つです。出てきた性質が安定しているので、交雑育種の中で固定するまでの期間を短くできます。交雑育種のものより2年ぐらい早く品種になれます。
細胞の一番外側の細胞壁(さいぼう へき)をとって、はだかにした細胞を「プロトプラスト」といいます。この、はだかにした細胞を育てて「変わりダネ」を創り出す方法です。
ある決まった性質に関係している、たった1個の遺伝子(いでん し)を入れて、変えたい性質だけを変える方法です。最近は、イネでも盛んに研究されています。