[質問]

 化学肥料が土地や人に対して害をあたえるということがわかっているのに、どうして、どこの農家の人たちも化学肥料を使うのですか。たい肥の方がよいならばたい肥を使えばいいのに・・・と思ってしまうのですが。
[答え]

 まず、化学肥料は人に対して害はあたえません。ちょっと思いちがいをしているようですね。肥料には、植物の栄養になるものと、土が酸性になるのを直すものがあり、それぞれそのために役立つ成分がふくまれています。ふつう肥料といえば、土にまいて植物の栄養になるものをさします。化学肥料は、化学的に合成したものとか、天然の鉱石や鉱石の成分を取り出したもの、などを混ぜて「つぶ状」にしたものです。

 イネが育つには、たくさんの養分が必要なのですが、イネがすう養分には、肥料から来るものと、田んぼの土からくるものの2つに分かれています。イネは、肥料から3分の1をすって、土から3分の2をすいます。

 昔は、イネがすうことのできる栄養分をじゅうぶんにあげられる肥料がありませんでした。そのためにイネの収かく量は、今のものに比べてとても少なかったのです。

 ところが化学肥料の登場によりイネがほしいだけの栄養をあげることができるようになったのです。化学肥料は田んぼに入れると、すぐにイネにすわれていきます。その点、たい肥はききめがゆっくりで、イネが栄養をほしがっているときにすぐにすわせることができません。

 化学肥料は、あたえる量も計算できて、イネの生長を見ながら細かく調整することができます。これも化学肥料の便利で良い点です。何回にも分けてあたえたり、1回の量も思ったとおりに変えられるので、イネの生長をうまくコントロールできます。こうした化学肥料を使うことで多くの農家では、たい肥を使うよりも美味しい米をたくさん作ることができます。このおかげで、イネだけでなくいろいろな作物の収かく量が増えてきました。「安定してたくさんとれる」これが化学肥料をやめられない理由です。

 ただし、化学肥料だけにたよっていると、土がやせてきて、土からの栄養分をイネにあげることができなくなります。たい肥もバランスよくうまく利用して土の性質を改良しておくことが重要です。

 たい肥は、イネのワラ(いなほを取った残りのくき)や、木の皮、草、家畜のふん尿などをじゅうぶんにくさらせて栄養分を豊かにした肥料です。たい肥ができるときに、くさらせる働きをした「び生物」は、そのままたい肥の中に栄養分として残ります。さらに、たい肥を土にまけば、土の中でゆっくり「び生物」に分解されて養分になるだけでなく、土のつぶを作り、すき間ができて土の性質が改良されていきます。

 でも、たい肥は、値段が化学肥料に比べて高く、ほしいだけの量がすぐ手に入りにくいのが欠点です。そもそもたい肥の原料になる家畜のふん尿が手に入りにくい状況もあるのです。

 それに、たい肥をまくのにも手間がかかります。たい肥を化学肥料と同じようにつぶ状にして、機械でどんどんまければ、たい肥もあつかいやすくなります。でも、たい肥をつぶ状にするには、肥料の成分量をできるだけ高くなるように工夫した、水分を減らした「つぶ」状でなければなりません。

 たい肥を作るのに、だいたい「たい積発こう」「立て型発こう」「横型発こう」の3つの方式があります。どれも最初から最後まで積みっぱなしにするのでなく、トラクターを使ったり、大きな入れ物の中で「ぼう」を使ってときどき全体を混ぜてやって、「発こう」がうまく進むように工夫して、たい肥の品質がそろうように努力をしています。空気の通りをよくしたりして、水分も減らしてパサパサしたものに仕上げないといけませんし、たい肥の成分や品質をそろえるのはとても大変なことです。

 家畜のふん尿を入れないで、草だけでたい肥にすると、肥料成分が一番少なく、イネのワラや木の皮などに少し家畜のふん尿を混ぜたたい肥が、その次に肥料成分が多くなり、家畜のふん尿とオガクズを混ぜたものが一番、肥料の成分を多くふくんでいます。

 でも、栄養分の高いたい肥をたくさん入れすぎると、土の中によけいな養分がたまってしまいます。人にたとえれば「肥満型」になってしまい、これでは健康な作物を作れないだけでなく、たい肥のムダ使いです。

 家畜のふん尿の中でも、豚のふんを混ぜた場合、牛のふんやニワトリのふんの場合よりも肥料成分が多くなります。向き不向きというよりは、だいたいこの3つの家畜を飼っている農家が多いので、たい肥に使う材料は、近くにいる農家が飼っている家畜(動物)が何かによるのでしょう。

 化学肥料の使いすぎで、環境をよごし、土地がやせてきたといわれていますが、現在の日本で、農家1けん1けんが手間と時間のかかるたい肥作りをするには、人手がたりず、「わかっているけど手が出せない」状況です。たい肥にはたい肥のいいところがあり、化学肥料には化学肥料のいいところがあります。これからの農業というのは、少ない肥料でじょうずに作物を作る技術を開発すること、あるいは、たい肥を中心に作物を作り、たりない分を化学肥料でおぎなうこと、つまり、化学肥料(と「たい肥」)をうまく使ってあげられる農業なのかもしれませんね。

 みなさん、どう思いますか?
[新潟県の農業試験場のT先生の答え]

 化学肥料が害をあたえるという考え方ですが、正しく使っていれば化学肥料が害になるということはありません。成分そのものは人に害とはいえませんので。逆にたい肥でもたくさん使いすぎれば地下水などをよごす原因になることもあるといわれています。

 以前、かぜ薬を人にたくさん飲ませて病気にさせた事件がありました。ふつうに飲んでいれば、病気を治す「薬」なのに、使い方をまちがえると「害」があるということです。

 化学肥料は害があって、たい肥だと害がないというのはたい肥だと水にしみ出すのがゆっくりになるから水がよごれにくいとかそういう意味でいっているのでしょうか。

 なぜ農家がみんなたい肥を使わないのかということになると、たい肥は重く、一度にたくさん使えないことがあり、肥料分も化学肥料に比べてバラバラですし、よ〜く、くさっていないと作物をからすことがあり、化学肥料のようにやったその時にきくことがありません(ゆっくりとききます)。

 おまけに近所の人にはくさいといわれておこられる、ここまで苦労して化学肥料より作物がたくさんとれるとも、高く売れるとも限らない...ちょっとおおげさですけど、こんな感じでしょうか?

 たい肥は使うときにも大変な苦労と、そして化学肥料を使うときよりもうんと作物の作り方を工夫しないといけません。かんたんにだれでも使えるものではないのです。

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