[質問]

 「はえぬき」を作るのにどれだけ時間がかかったのですか? 「はえぬき」の歴史が知りたいです。
[答え]

 「はえぬき」は「庄内29号」のめしべに「秋田31号」(のちに「あきたこまち」という品種名がつきます。)のおしべの花粉(かふん)をつけてできた品種です。

 「庄内29号」は、だいぶ前に、私たちの試験場で開発したお米で、イネの「背たけ」が短く、「くき」が強くて倒れにくいことや、おいしいことで注目されていました。でも、残念ながら、お米の見た目のきれいさが、その当時に山形県で一番たくさん作られていた「ササニシキ」に比べて少し悪かったので、品種にはなれなかったのです。また、相手の「秋田31号」は、「あきたこまち」という名前がつく前から、おいしくてきれいなお米ができると評判でした。そこで、「庄内29号」の悪いところをなおして、きれいでおいしいお米を創ろうと、かけあわせに使いました。

 この両親のよいところをもらったおいしくて品質のよい品種を作ろうとかけあわせをしたのが1982年の夏のことです。この年の秋に6つぶのタネが実りました。かけあわせ成功!です。この6粒から「なえ」を作り、1983年の春に田んぼに植えました。

 そして、またタネをとり、それをまいてということをくり返していくうちに、タネの数も増えると同時に、1つ1つのタネは、その両親からもらったいろいろな性質の遺伝子(いでん し)の組み合わせが、だんだんと決まってきます。そして1986年にやっと、たくさんの子どもたちの中から良いものを選び出す仕事に入りました。

 人間と同じでイネも両親から良いところも悪いところももらっています。お父さんにすごく似ている子供もいれば、お母さんにそっくりの子もいますね。イネの品種改良の場合は、なるべく、いろいろな性質がよいものばかりを選びます。1回で本当に良いものを選び出すのは難しいので、その後何年間か、くり返すことで、だいたい目標に合うイネを選び出します。すべての性質が文句なしに良い!というものはなく、「あちらを立てれば、こちらが立たず」のように、どの性質を重要だと見るかで、高望みせずに、ある程度は割り切ります。そして、次はもっといいものを選ぼう、と新しくまたかけあわせをおこないます。品種改良に終わりはありません。

 選ばれる前の1986年の春には1,650個もいた「はえぬき」の兄弟たちは、このような選び出しをくり返し、「はえぬき」の兄弟たちは1988年には4つになりました。この年の秋にこの4つから1つが選ばれ「庄546」という名前がつけられました(庄内の「庄」です)。この「庄」という名前や、あとで出てくる「山形○○号」は、私たちの試験場で開発したイネにつけられる整理番号です。

 「庄」という名前が1年に150種類ぐらいのイネにつけられるのに対し、「山形○○号」は1年に2〜4つのイネにしかつけません。「庄」のついたイネは2年の間に、病気に強いか、寒さに強いか、たくさんとれるか、おいしいか、お米はきれいかなど数々の検査や試験をして、合格したら「山形○○号」という名前がつきます。「庄546」というイネは、1988〜1989年の2年間の成績が良かったので「山形45号」という名前がつきました。

 「山形45号」という名前がつくと、今度は山形県内の各地の試験場や、農家の人に試しに作ってもらいます。4年間こうして試験をくり返し、成績が良いと、新品種としてデビューします。「はえぬき」は1992年に大々的にデビューしました。かけあわせした年から数えてちょうど10年めのことでした。

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