[質問]

 中国で一番売れている米は何ですか? 中国では米の品種改良はどうやっているのですか?

[答え]

  広大な国土を持つ中国は、世界全体の4割弱(40%近い)の米生産量(世界最大)を誇っています。広大な稲作面積に加え、伝統的に二期作が行われ、日本の技術(資本)提供もあり、積極的な農業政策により、大量な生産を可能にしています。

 中国の主食は、米が主ですが、小麦、雑穀を主食とする地域もあります。

 生産される米の8割(80%)は長粒種で、ここ数年は、短粒で高品質米の生産にも力を入れています。ジャポニカ米の割合は全生産量の20%ぐらいですが、それだけでも日本の生産量をはるかに上回り、世界最大のジャポニカ米生産国です。

【お米の生産体制】

 中国の農業地帯をおおまかに分けると、東北部・華北が畑作、西部が畜産、南部が稲作となり、揚子江中・下流で米生産の50%を占めています。

 作付け面積は1976年の3,622万ヘクタールが最大で、その後は減ってきています。

 減っている理由は、経済が発展している地域での水田の農外転用や、収益性の高い野菜・果樹への転地、養魚地への転換などです。

【お米の生産量(=モミの量で計算)】
1950年     5,500万トン
1970年   1億トン
1980年   1億4,300万トン
1990年   1億9,200万トン
1996年   1億9,700万トン(世界第1位)
1997年   1億9,850万トン(世界第1位)


【これからの問題点】

 収入が増えて経済的に豊かになった消費者が味の良い米を買いたがっている中で、品質・味の良いジャポニカ米やインディカ米の生産量の不足が問題となっています。

 これまで、小麦や雑穀を主食としていた北方地域でも米を食べるようになってきており、生産している地域から米をほしがっている地域へうまく届かず、深刻な問題になっています。

 近年では、昔から米のおもな産地であった南方の沿海地区(上海など)の急速な経済成長は、農地をどんどん工業用地・住宅地などに変えているため、米を作る面積が急に減ってきています。

 中国では、雲南省という所で日本にあるような稲の品種改良をおこなっています。

 雲南省は、面積が39万平方キロメートルあまりで日本よりやや広く、西はミャンマー、南はラオス・ベトナムと国境を接しています。雲南省の水田面積は約90万ha、稲は標高76mから2670mまでの所で作られています。標高の違いにより、米作りの時期や品種の分布が異なり、標高の高い地帯では冷害に強い品種が作られています。しかし、それでも、冷害やいもち病がたびたび発生し、米の生産が不安定になっていました。

 雲南省は米作りの始まりの土地ではないかとみられている所です。そこで、ここには稲の品種改良をすすめていくうえで、いろいろと使えそうな性質をもった品種がたくさんあることを利用しようと考えたのです。

 日本の、米の品質が良くて、たくさんとれる品種とをかけあわせをして新品種を開発することによって、米が安定して生産されるように、雲南省では、1982年以来、雲南省農業科学院(「農業科学院」は日本で言えば農業試験場にあたる。各省には農業科学院があり、農業の研究を行っている。)と、日本の国際農林水産業研究センターとの共同研究を始めることになり、雲南省に豊富にある、さまざまな性質の品種を利用した稲の品種改良がスタートしたのです。

 実際に、日中共同研究で米の品種改良をしている昆明という場所は、台北とほぼ同じ緯度ですが、標高が高いため夏は涼しくなっています。特に、7〜8月は雨期にあたり、降雨量が多く、お日様の照る時間は少なくなっています。稲の生長で一番寒さに弱い時期、つまり、いなほが作られてから、花がさく時期にかけての昆明の平均気温は、青森県や北海道の旭川より低く、19〜20℃くらいの低温が長期間続きます。そのため、冷害やいもち病など病気の発生が多くなっていました。

 そこで、共同研究で品種改良をする一番のねらいは、標高1800〜2100mの高地向けには「もっと冷害に強い稲」、また、1500〜1800mの地帯向けには「もっといもち病に強い稲」をめざしました。また、それまでに作られていた雲南省の品種は、くきが長くなり倒れやすく、米の見た目のきれいさも不良でした。このため、くきが短く、できた米がきれいな日本品種とかけあわせしました。

 日本からは、品種改良や稲の病気などの専門家40名以上がこの共同研究に参加し、冷害や病気に強く、品質が良好で、たくさん米がとれる品種の育成に取り組んできました。その結果、1993年5月に開発された4品種、「合系(ホウシー)15号」、「合系24号」、「合系25号」、「合系30号」のほか、これまでに9品種が開発されました。「中日合作系統」にちなんで名づけられた「合系」品種の母親には、日本の東北地方で開発された、寒さに強い「ヨネシロ」や、いもち病に強い「トヨニシキ」なども使われました。

 雲南省北部の高原地帯で安定して米作りができるようにめざして開発された「合系」品種は、それまでの雲南品種に比べてくきが短く、倒れにくく、とれ高も多く、米もきれいで、性質が大幅に改良されました。

 たとえば「合系15号」は、米が実るのが早い、わせ品種で、冷害に強く、寒冷な雲南省の標高1900〜2100m地帯向き。これまであった品種の「雲粳9号」に比べて、くきの長さは2割ほど短く、倒れにくくなったとともに、米の見た目のきれいさや、ごはんの味もまずまずで、それまでより大幅に改良されています。とれ高は多く、モミの重さで800kg/10アールと、「雲粳9号」より3割もたくさんとれる結果となっています。

 最近の雲南省農業科学院の調査によれば、1993年に開発された合系品種の作付面積は10万ヘクタール以上に増え、とれ高の平均は、モミで9万トン/ヘクタールと、雲南の品種よりも15%も増えており、「合系」品種を作ったことで増えた米の量は約10万トンと推定されています。1人当たりモミで1年に200kg(米にするとその8割の約160kg)を消費すると仮定すると、「合系」品種が開発されて、面積が広がったことによって、約50万人分の米を増産したことになります。

 これは結局、日本円に換算して13億円もの効果が上がったことと同じになります。共同研究による優れた品種の開発は、現在もなお続けられており、開発された品種が作られる田んぼの面積も広がる一方とのことですので、「合系」品種は、これからもますます重要になっていくものと期待されています。

 しかし、麗江などの標高の高い、米作りが限界に近い地帯では、冷害にとても強い品種でも、年によっては冷害の被害を受けてしまうことがあります。このため、雲南省の稲の素材だけでなく、インドネシアなどの熱帯の、標高が高い山岳地帯にある、いろいろな稲の品種も品種改良の素材として広く利用し、もっともっと冷害に強い品種の開発をめざす必要があるでしょう。

 現在、冷害に対する強さをさらに上げるために、農林水産省では研究を進めています。将来、研究の成果を品種改良に応用して、世界で一番、冷害に強い稲を創り出すことに挑戦することにより、雲南省だけでなく、広く世界の米作り発展のために貢献することができるようになるでしょう。

 また、中国都市部での生活水準は驚くべきスピードで向上しており、米の見た目がきれいで、ごはんの味が優れた品種の開発が求められています。最近の共同研究の調査によれば、雲南省の都市住民がどんな米を好むかといえば、日本人と同じように、やわらかく粘りのある米を好むという結果が出ています。したがって、中国でのこれからの品種改良には、今まで日本でおこなわれてきた味の良いものを選び出すという品種改良の方法が応用できるものと考えられます。

BACK  質問集に戻る